この記事の要点
- 硬式球は縫い目が盛り上がり、軟式球はゴムの表面に凹凸があります。
- 縫い目の向きで空気の流れが変わる効果は、いまも研究が進められています。
- 「硬式向け」は、縫い目の効果に頼る割合が大きい握りに付く目印です。
ボールの表面が、そもそも違う
硬式球は、革を縫い合わせたボールで、縫い目が表面から盛り上がっています。軟式球はゴムでできていて、表面に縫い目を模した凹凸や、小さなくぼみがあります。硬式球の縫い目に比べると、軟式球の凹凸は段差が小さいとされます。
握ったときの指のかかり方も、ボールによって違います。軟式球は中が空洞で柔らかく、指で押したときの感触も硬式球とは違います。同じ握りの形でも、指先がボールに伝える力の向きや強さが変わる場合があります。
回転の向きと量で曲がり方が決まる仕組みは、どちらのボールにも共通です。違いが出やすいのは、縫い目そのものが空気の流れに関わる部分です。縫い目の効果に頼る割合が小さい握りほど、ボールによる違いは出にくいとされます。
縫い目の向きで、空気の流れが変わる
回転するボールは、回転の向きに応じた方向へ、空気から押されて曲がります。そのため、回転方向の時計の時刻は、ボールが押されるおおよその向きの目安として読むことができます。
一方で、盛り上がった縫い目は、ボールの表面を流れる空気のはがれ方を変えます。縫い目がボールの片側にかたよって並ぶと、ボールの両側で空気のはがれる位置がずれる場合があります。すると、回転方向だけでは説明しきれない向きへ、ボールが動くことがあります。
この縫い目の効果は、計測機器が広まるにつれて注目されるようになったと言われます。どの握りで、どれくらい効くのかは、いまも研究が進められている途中です。そのため、この図鑑では縫い目の効果を「場合がある」という言い方で書いています。
「硬式向け」バッジの意味
握りの記事では、縫い目の影響を「ほぼなし」「少しある」「大きい」の三段階で示しています。「大きい」の握りには、「硬式向け」のバッジが付きます。縫い目の向きを使って変化をつくる割合が大きく、硬式球の縫い目があってこそ出やすいとされる動きを持つ握りです。
「硬式向け」は、軟式球では投げられないという意味ではありません。軟式球では、硬式球と同じ動きにならない場合がある、という目印です。球筋チェックで軟式を選んだときは、硬式向けの握りを候補の後ろのほうに並べますが、候補から消すことはしていません。
たとえばワンシームは、縫い目の向きの効果が大きいとされ、「硬式向け」を付けています。ツーシームやスイーパーのように、縫い目の影響が少しあるとされる握りには、「軟式では変化の出方が変わる場合あり」と添えています。
軟式で握りを試すときの見方
硬式で知られている握りの情報は、軟式にそのまま当てはまらない場合があります。動画や本で見た変化と、自分の球の動きが違っても、それは握りの失敗とは限りません。そのボールで出る動きも、その人の球の個性の一つです。
計測では、回転方向と、実際の変化の向きを並べて見ると手がかりになります。Rapsodo の資料では、変化量を、回転がなかった場合の軌道との差として表しています。回転方向から読める向きと変化量の向きがずれるときは、縫い目の効果が関わっている場合があります。回転効率が低い球では、回転方向の表示そのものが、球ごとにばらつく場合もあります。
軟式と硬式の両方を使う選手は、ボールごとに分けて計測すると、違いがわかりやすくなります。どの握りを試すかは、計測の結果を見ながら、指導者と確認してください。
関係する握り
参考資料
Rapsodo|Spin Induced Break vs. Trajectory Break(2025)
Rapsodo Japan|ラプソード計測データ解説④「変化量」(2024)
このページの文章と図は、CLOVERが一般的な投球の知識をもとに独自に作成したものです。外部資料の文章・画像・数値は転載していません。
MEASURE YOUR BALL
あなたの球で、確かめる。
回転方向、回転効率、変化量。計測すると、このチェックの“答え合わせ”ができます。